2023~2024年の世界半導(dǎo)體市場の見通しと米國の戦略
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2023-07-20 18:31
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新型コロナ禍で2年以上続いた市場の活況から一転、2022年半ばごろを境に、需要にブレーキがかかった世界の半導(dǎo)體市場。2023年前半も、悪化する市況に回復(fù)の兆しが見えない狀況が続く。世界の主要半導(dǎo)體メーカー各社はグローバル市場の急激な変化に対応すべく、在庫調(diào)整?削減の取り組みを優(yōu)先しており、製造裝置や素材などの周辺企業(yè)も深刻な受注減に直面する。他方、業(yè)界団體や市場調(diào)査會社は、世界の半導(dǎo)體市場が2024年には回復(fù)に転じるとの見通しを維持している。また、半導(dǎo)體需要が減少する中でも、先端半導(dǎo)體の製造工場の新設(shè)や増設(shè)のための設(shè)備投資は、米國を中心に2023年も堅調(diào)に伸び、過去最高額を更新する見通しが示されている。
その中で、米國政府が2022年後半から2023年前半にかけて相次いで発表した半導(dǎo)體の輸出管理や投資に関わる規(guī)則は、世界全體で半導(dǎo)體関連産業(yè)の投資?輸出戦略、サプライチェーンに少なからず影響を及ぼすことが見込まれる。米國政府や有識者へのインタビューを交えつつ、2023~2024年の半導(dǎo)體市場と投資の動向を展望する。
半導(dǎo)體裝置への投資額、2024年には2割増
カナダに本社を有する技術(shù)情報サービス會社TechInsightは2023年1月23日、2023年の世界の半導(dǎo)體売上高が前年比5%減の6,070億ドルになるとの予測値を発表した(注1)。このうち、集積回路(IC)が同6%減の4,932億ドル、一方、非ICに分類されるオプトエレクトロニクス、センサ/アクチュエータ、ディスクリート半導(dǎo)體(O-S-D)は同0.4%増の1,139億ドルとされた。2022年下半期からの半導(dǎo)體需要の減少傾向は、少なくとも2023年半ばから後半までは継続するとみられる。しかしながら、2024年以降については、メモリやロジックなどのICやO-S-Dを含む幅広い製品群での需要回復(fù)から、プラス成長に転じるとの見通しを示す。同見通しによれば、2024年の半導(dǎo)體売上高は同10%増、2025年は同11%増、2026年は同14%増と3年連続で2桁のプラス成長となる。
半導(dǎo)體國際業(yè)界団體のSEMIは2023年3月15日、世界の半導(dǎo)體製造施設(shè)における設(shè)備投資見通しを報告するWorld Fab Forecastレポート(2023年第1四半期版)(注2)のなかで、2023年の世界全體の半導(dǎo)體前工程における製造裝置向けの支出額(注3)が、前年比22.3%減の763億ドルに落ち込むとの予測値を発表した。これは、2022年12月版のレポートで発表した前回予測値(同16.2%減の810億ドル)を下方修正したかたちである。PC(パソコン)やモバイルなどの世界的な需要の減少を受けた半導(dǎo)體の在庫調(diào)整プロセスの継続が、臺灣や韓國、中國をはじめとする主要生産拠點での製造裝置需要を下押しした。とりわけ、中國における製造裝置向け支出は前年比35.2%減と、世界全體の減少幅を13ポイント近く上回った。また、半導(dǎo)體の種別では、メモリが同44.4%減の171億ドルと最大の落ち込み幅を記録する一方、アナログ部門は同13.1%増の 56 億ドルと、唯一のプラスの伸びを示した。
他方、SEMIは、主要半導(dǎo)體メーカーの在庫調(diào)整プロセスが2023年中にはほぼ完了することに伴い、2024年には、前工程の製造裝置向けの支出額が前年比20.6%増の920億ドルへ回復(fù)すると予測する。受入れ國?地域別の2024年の支出見込み額は、臺灣が同4.2%増の249億ドル、韓國が同41.5%増の210億ドル、中國は同1.6%増の166億ドル、米國は同23.9%増の112億ドルと見込まれる。また、日本については、大幅な落ち込みとなった前年(50%減)から一転し、同82.2%増の70億ドルとされている。
米國內(nèi)に約560社の會員企業(yè)を有するSEMI米國本部(ワシントンD.C.)のジョン?クーニー副會長は、2023年3月15日、ジェトロのインタビューに対して、2024年以降の米國內(nèi)での大規(guī)模半導(dǎo)體工場の稼働などを踏まえつつ、「半導(dǎo)體の製造裝置市場の2023年の落ち込みは一時的なものになるだろう。2024年は設(shè)備投資が回復(fù)し、再びビッグイヤーになる」と強気の見通しを示す。
新規(guī)の製造工場建設(shè)、米國が牽引
前出のSEMIのレポートでは、半導(dǎo)體前工程における新規(guī)製造工場建設(shè)に関連する支出見通しも公表されている。同見通しによれば、2023年は半導(dǎo)體市況の悪化にもかかわらず、「新たなファブの建設(shè)プロジェクトが牽引し、2023年の建設(shè)投資額は過去最高額を更新」「2024年もさらに成長が続く」とされた。具體的には、世界全體で新規(guī)製造工場29件の著工を含む全97件の建設(shè)プロジェクトが進行し、関連する投資額として前年比6%増の306億ドルが支出される。また、2024年には新規(guī)製造工場6件の著工を含む計83件のプロジェクトに対して、同21%増の371億ドルの支出を見込む。
半導(dǎo)體市況が悪化する中で、工場建設(shè)プロジェクトへの投資が拡大する背景には、近年、米國や臺灣、韓國、日本などの主要國?地域政府が、大規(guī)模補助金拠出を伴う半導(dǎo)體産業(yè)の奨勵策を?qū)毪筏皮い毪长趣ⅳ耄?a >2023年1月24日付地域?分析レポート參照)。特に米國においては、2022年8月に成立したCHIPSおよび科學法(CHIPSプラス法)を通じた、米國內(nèi)半導(dǎo)體製造能力強化のための527億ドル規(guī)模の予算措置の適用を見據(jù)え、インテル、TSMC、サムスン電子をはじめとする主要半導(dǎo)體メーカーが數(shù)百億ドル規(guī)模の新工場建設(shè)計畫をすでに発表している(2022年12月28日付地域?分析レポート參照)。こうした事情から、2023~2024年の工場建設(shè)プロジェクト関連投資額では、米國が最大の受け入れ國となることが見込まれている(図1參照)。
インテル(寫真左)およびTSMC(寫真右)の新工場建設(shè)の現(xiàn)場(2023年3月15日、ジェトロ撮影)
半導(dǎo)體前工程の対中FDI、萎む
米國での新規(guī)工場建設(shè)向け投資額が増加するのとは対照的に、中國向けの同投資額は2023年第2四半期をピークに減少に転じ、2024年後半には、歐州?中東向けや日本向けの投資額を下回る水準に落ち込むとの見通しが示されている。なお、中國における工場建設(shè)プロジェクトとしては、2022~2024年の3年間で合計20件の案件が報告されているが、うち19件は中國地場企業(yè)による投資案件である。外資系企業(yè)による案件としては1件、韓國のSK Hynix(SKハイニックス)が米國インテルから買収したNAND SSD事業(yè)に含まれる大連工場の拡張プロジェクトのみが報告されている(注4)。
多國籍企業(yè)が中國で新規(guī)半導(dǎo)體工場建設(shè)を躊躇(ちゅうちょ)する大きな要因の1つとして考えられるのが、2022年10月に米國商務(wù)省産業(yè)安全保障局(BIS)が中國を念頭に公布?施行した半導(dǎo)體関連製品(物品?技術(shù)?ソフトウエア)の輸出管理規(guī)則(EAR)強化措置である。中國向けの先端半導(dǎo)體製品や半導(dǎo)體製造裝置の輸出を厳格に制限する同措置の運用開始に伴い、日本企業(yè)を含む半導(dǎo)體製造裝置関連企業(yè)は対中輸出戦略の見直しを迫られている(本特集「米國の輸出管理に新戦略、グローバル企業(yè)に配慮(世界)」參照)。すでに、中國向けに米國の半導(dǎo)體製造裝置最大手3社であるアプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、KLAを含む裝置メーカー各社が、中國に対して、自社の製造裝置の輸出のほか、裝置の設(shè)置?メンテナンスなどに関する各種サービス提供を即時停止するなど、中國國內(nèi)の設(shè)備投資およびサプライチェーンに一定の影響が及んでいる(注5)。
半導(dǎo)體を巡る米中間の攻防を描いた「CHIP WAR」(2022年)の著者でもある、タフツ大學のクリス?ミラー準教授は、2023年4月、ジェトロのオンライン形式でのインタビューに対し、「米國の対中半導(dǎo)體輸出規(guī)制は、中國國內(nèi)工場の増設(shè)やアップグレードのための設(shè)備投資意欲をそぐ?,F(xiàn)在、追加投資を考えている企業(yè)はいないのではないか。中國に生産拠點を有する韓國企業(yè)などが、當面1年間の適用除外措置のさらなる延長を要請しているのは理解できる。おそらく中長期的に5~10年をかけて生産拠點を中國から韓國に移す計畫を?qū)g行していくのではないか」との見方を示す。
米國、日本から中國向けの半導(dǎo)體製造裝置輸出は大きく減少
では、米國の輸出管理が強化された2022年10月以降、中國の半導(dǎo)體製造裝置の輸入はどのように変化しているのか。以下の図2は、世界の半導(dǎo)體製造裝置(HSコード8486項)の國別輸入額上位3カ國(2022年実績ベース)である中國、臺灣、韓國について、四半期別の同品目の輸入額の推移を示したものである。中國は、2020年~2021年にかけて世界の半導(dǎo)體製造裝置輸入の約3分の1の構(gòu)成比を誇る最大の輸入國であったが、2022年第4四半期(10~12月)には前年同期比37%減、前期比28%減の67億ドルに減少している。同時期に大幅に増加した臺灣(121億ドル)の半分近い水準にまで落ち込んでいることが分かる。
また図3は、中國の同品目の輸入推移(月別)に関して、主要相手國(日本、米國、オランダ)別に見たものである。米國からの輸入は、2022年10月の輸出管理規(guī)則強化以降、顕著に減少していることが分かる。また、中國にとって最大の輸入相手國である日本からの輸入についても、米國と同時期を境に、顕著な減少傾向が見られる。これは、米國の輸出管理措置の域外適用リスクなどのリスクを踏まえ、日本企業(yè)が自ら対中輸出や現(xiàn)地での中國企業(yè)向け販売の抑制に動いたことが背景にあると考えられる。日本國內(nèi)においても2023年3月31日、経済産業(yè)省が高性能な半導(dǎo)體製造裝置など23品目の輸出管理を強化し、規(guī)制対象に加える規(guī)則案を発表(注6)。同日よりパブリックコメントの募集を開始し、5月の公布、7月の施行を予定している。同規(guī)則が施行されれば、友好國など42カ國?地域向けを除いて個別許可が必要になり、対象品目の中國への輸出は難しくなるとみられる。他方、日本の輸出管理規(guī)則の有無にかかわらず、すでに日本企業(yè)の間では、米國の輸出管理規(guī)則と足並みをそろえた輸出抑制の動きが一定程度広がっているものと推察できる。
多國籍企業(yè)の投資戦略を左右しうるCHIPSプラス法のガードレール條項
多國籍企業(yè)の対中投資を躊躇させる米國発の政策は、前出の対中輸出管理強化措置だけにはとどまらない。もう1つ、CHIPSプラス法に基づく資金援助プログラムに関連し、受益者が順守すべき安全保障上のガードレール條項案の存在は、とりわけ米中両國に生産拠點を有する企業(yè)にとって、今後の中長期的な対中投資戦略を左右するものと考えられる。
2023年3月21日に発表された同規(guī)則案は、パブリックコメント募集を経て、最終規(guī)則が2023年後半に公示される予定である。規(guī)則案によると、受益者は資金受領(lǐng)日から10年間、中國を含む懸念國での投資を著しく制限される。制限の內(nèi)容は、先端半導(dǎo)體施設(shè)への投資のみならず、レガシー半導(dǎo)體施設(shè)への投資、さらには特定技術(shù)や製品に関する懸念國団體との共同研究や技術(shù)ライセンス供與も対象に含むものとなっている(本特集「始動したCHIPSプログラム、サプライチェーンに與える影響は(米國)」參照)。 米國商務(wù)省でCHIPSプラス法の細則を含めた策定?施行、運用を擔うCHIPS Program Office (CPO)の擔當ダイレクター、フランシス?チャン氏は2023年3月28日、ジェトロのインタビュー(注7)に対し、同ガードレール條項の目的を次のように説明する?!秆a助金を受けて米國へ投資する企業(yè)が、將來的にさらに自社の半導(dǎo)體の供給能力を高める場合には、懸念國ではないいずれかの國?地域への投資を促すことを意図している。必ずしも米國への追加投資を要請するものではない」
また、その背景事情について、チャン氏は「CHIPSプラス法に基づく補助金は米國民の稅金から賄われており、それを米國の安全保障政策に反する用途で使うことは許容できない。ガードレール條項は、補助金の受益企業(yè)のみに限定して適用するものであり、あらゆる輸出企業(yè)を?qū)澫螭趣筏枯敵龉芾恧趣闲再|(zhì)が異なる點は理解してほしい」と話す。さらに、生産能力の大きい多國籍企業(yè)が中國での追加投資を抑制することが、世界の半導(dǎo)體サプライチェーンの混亂を招くのではないかという懸念に対しては、「ガードレール條項は遡及(そきゅう)適用しない點で、サプライチェーンを混亂させないよう配慮している。中國內(nèi)では、先端半導(dǎo)體に関して既存設(shè)備の5%以內(nèi)の拡張、レガシー半導(dǎo)體については10%以內(nèi)の拡張を認めており、稼働を維持継続することは可能」とした。
- 注1:
- TechInsights, The McClean Report Research Bulletin
- 注2:
- 2023年3月15日付SEMIプレスリリース
- 注3:
- SEMIレポートがカバーする全世界の半導(dǎo)體関連企業(yè)1,470施設(shè)(2023年以降に量産開始を見込む142施設(shè)を含む)による機械設(shè)備向け支出額の合計。
- 注4:
- SKハイニックスによるインテルNAND事業(yè)の買収については、2021年12月31日付同社プレスリリースを參照 。
- 注5:
- アプライドマテリアルズの2022年10月12日付プレスリリース、ラムリサーチ2022年第3四半期決算報告資料(10月19日付)、2022年10月20日付ロイター通信報道、同10月27日付NIKKEI Asia報道情報などに基づく
- 注6:
- 経済産業(yè)?。?023年3月31日)、「輸出貿(mào)易管理令別表第一及び外國為替令別表の規(guī)定に基づき貨物又は技術(shù)を定める省令の一部を改正する省令案等に対する意見募集について」
- 注7:
- 先方訪日時の筆者による直接インタビューにて聴取した內(nèi)容に基づく。
- 執(zhí)筆者紹介
- ジェトロ調(diào)査部國際経済課長
伊藤 博敏(いとう ひろとし) - 1998年、ジェトロ入構(gòu)。ジェトロ?ニューデリー事務(wù)所、ジェトロ?バンコク事務(wù)所、企畫部海外地域戦略主幹?東南アジアなどを経て現(xiàn)職。主な著書:『FTAの基礎(chǔ)と実踐:賢く活用するための手引き』(編著、白水社)、『タイ?プラスワンの企業(yè)戦略』(共著、勁草書房)、『アジア主要國のビジネス環(huán)境比較』『アジア新興國のビジネス環(huán)境比較』(編著、ジェトロ)、『インドVS中國:二大新興國の実力比較』(共著、日本経済新聞出版社)、『インド成長ビジネス地図』(共著、日本経済新聞出版社)、『インド稅務(wù)ガイド:間接稅のすべてがわかる』(単著、ジェトロ)など。